東京から松本を通って大阪を目指すのが今回の旅の目的だが、もう一つの計画があった。一ヶ月ほど、松本に滞在するという自転車乗りには夢のような計画だ。
当然、ホテルだと高くなるので、マンスリーやウイクリーと呼ばれる賃貸住宅を探した。
いろいろ探したが、けっきょく有名所のレオパレスを選んだ。
鍵交換や契約料等の一時費用を含めて10万ちょいで収まる。
借りる前に、レオパレスの評判が気になり、ネットで調べていると、「壁が薄くて、チャイムがなったら全室の住人が出てきた」とか「壁ドンしたら壁に穴が空いた、でも空いた後も聞こえてくる音の大きさは変わらなかった」とかいろいろ面白い伝説が出てくる。
まあ、僕らは短期なので、あまりに気しない。
ただ、問題は鍵の受け取りだ。
自宅の最寄りで鍵くれよと言いたいが、
まあ、仕方ない。
そうなるとレオパレスセンターが閉まる18時までに松本まで到着しないといけない。
旅のはじまり
本日のスタートは上田駅前のビジネスホテルで、そこから松本に向かう。
※今回はトラブル続きのため、写真は最初しか撮れていませんでした。
そのため、別日に撮影した写真や他の場所の写真を使用しています
今回は県道62号線を利用して、山越する計画だ。
スタートの上田駅の周辺は混雑しているし、途中までの国道は交通量も多く走りづらい。
一方で、県道62号線に入ると、ほとんど車が通らず、快適だ。
ただ、ここまでの疲れとゆるい登り坂で、速度はもう出ず、なんとかペダルを漕いで頑張っていた。
体はボロボロだが、あとは道なりに行けば松本方面に抜けられる。最後の力を振り絞り切って走る。
中盤、分かれ道が見えてくる。
道なりなので、まっすぐ行けば良いが、近づくと走行車線側にコーンが立っているのが見える。
何か書かれているようだが、遠くて読めない。
もう少し近づくと、ようやく看板が目に入って来た。
『通行止め』
「マジかよ」一瞬頭が真っ白になる。
※写真はイメージです。実物とは異なります
それでも冷静になり次にどうするか
考える
「とりあえず、行けるとこまで行ってみよう」
通行止めと言っても、コーンが立っているだけ
しかも反対側は空いている。
自転車は、押して歩けばただの歩行者だし、全面通行止めでなければ入る事は可能だ。少し中に入り様子を見る事にした。
しかし、こちらも登りがどんどん続いている。
いったい、どこまで続いているのだろうか?
さすがに、今さら上田に引き返すわかにも行かず、こうなると先ほどの分かれ道へ進む選択を考える。
この道はどこへと続いているのか?
googlemapで確認する。
つ、美ヶ原ww
まあ、方角的にそんな気がしていたが。
いきなりはじまるヒルクライム
「しんどい」
本来であれば、荷物をなるべく軽くしつつ、補給もしっかり準備し
前日から、心身ともにコンディションを整える。
今回は重い荷物をしょいながら、慣れない小軽車でのヒルクライム。
当然モチベーションも上がらない。
目の前にあるのは、ただの"絶望 "や!
と、珍しく大好きなヒルクライムで泣き言を言う。
さらに、美ヶ原まで行けたとして、ホントにそこから松本まで行けるのか?
しかし、ちゃんと調べたわけではないので、本当にこちらから行けるか?
また、通行止めになっていないか?心配になる
そんな事を考えていると、ヒルクライムにも集中できない。
見かねた嫁が
僕は、もはや、「道具の問題じゃないんだよ」
と言いたかったが、少しだけ、自転車も心も軽くなった。
なんとかヒルクライムを続けていく。
もう、こういう時は余計な事は考えず、ひとこぎ、ひとこぎペダルを回す事に集中した方が良い。余計な事は考えない。いやむしろ考えられない。今までも疲れた時は、無心で走るよう心がけるが、この日は自然とできていた気がする。
確かに辛かったが、気づいたら頂上だった。
ようやく到着した頂上には美ヶ原の道の駅があるが、今日は時間が無いので、トイレ休憩だけすます。
あとは美ヶ原の中を自転車を押して行き、松本へダウンヒルできる道に合流すれば良いだけ。
時間はなんとかぎりぎり。レオパレスセンターが18時に閉まるため、急いで入り口を探し、先を進んで行く。
しかし、今度は「美ヶ原への入り口が見つからない。」
中にさえ入ればこっちのものという気持ちがあり、逆にあせる。
しばらく走っていると、ようやく入り口が見つかったが、中に入る為には階段を登らないといけないようだ。
自転車があるので、当然登る為には、自転車を担いで登らないと行けないが、
ここをロードバイク担いで登るローディーなんて想像できない。
絶対ちゃうやろー。
しかし、この先に進んでも別の入り口が見つかる保証はない
とにかく気合いで上まで行けば、中で合流できるだろう・・
もう引き返す時間はない。
すでに大金をかけていて引き返せず沼にハマるギャンブラーの心理である。
ざわざわ・・
今度は、登山とハイキング
階段を担いで登った後はゆるやかに登りになっている木道の上を歩く。
道幅はそこそこ広く、十分自転車を押しながら進めるが、ときどきハイカーの人とすれ違う。十分に広いので問題ないが、こんな所を自転車で押しているなんて、ものすごく場違い感がある。
とりあえず、階段を登りきったが、今度は下に降りる階段が見える。
「何の為に、登らしたんだ」
しかも、下りる方の階段は冊の中にあって、入り口むっちゃ狭い。
なんでこんなに狭いんだ?
自転車持ってくる奴を通させない為か?
こんなところに自転車持ってくる奴いないだろ!
いや、いたな…
下りの道が絶対ローディー入れさせないマンになっているが、Bromptonだともっと大変だ。30Lのフロントバッグをつけているので、一度解体し、それぞれ持ち上げて冊を越える。しかも出口も同じく狭く、さらにもう一度入ってまた出る。一度冊から出て次の冊に入る。その度にBromptonとバッグを持ち上げる。
階段を降り、一番下に到着
なんとか一番下に着いた。目の前には山本小屋のふる里館という建物がある。その前には道路がある。右に行けば美ヶ原を横断できそうだ。逆に左側には駐車場が見える。駐車場という事はここまで車でこれるのだろう。
もう間違えたくないし、駐車場があるのが気になる。
建物に入り、道を確認する事にした。
あのすみません、自転車で松本方面へ降りるのはこの道を西へ行けばよいですか?
そうですよ。自転車は乗ることはできないですが、押していけば大丈夫です。
ちなみに自転車の人は、普通は隣の駐車場から入って来ますか?
そうですね。
僕らは道の駅から自転車を担いで、階段を上って、階段を降りてきたんでんすが、これって無駄でした?
それは・・無駄ですね。
うーん、やっぱりと思いつつ、後悔している時間もないので、先を急ぐことにした。
ようやく、牧場のような所の間を進んでいく。回りには、足の短いおうまさんや牛さんもいる。本当ならゆっくり見学していきたいが、今日は時間がない。
さらに進んでいくと、ゆるやかに上った道の先に王ヶ頭ホテルが見える。
圧巻の景色だ。
出口を探していると、道しるべを見つけるが、王ヶ頭まで何メートル、王ヶ鼻まで何メートルと書かれている。
王ヶ頭は標高2,304m、王ヶ鼻は標高2,008m、どちらも大パノラマの絶景スポットだ。
いや、今は絶景スポットに よっている暇ないんだけど
出口を教えてくれと、出口への道しるべを探すが、見つからず、行ったり来たり。
何度かして、ようやく出口へつづく下り坂を見つける。
自転車に乗り坂道をゆっくり下って行く・・
が、
まさかのオフロード!!
さすがにカーブは怖くなり、けっきょく自転車を押しながら下って行く。
ようやくオンロードにぬけられた。
トラブルは繰り返す
まわりは森林限界を突破していて、アップダウンのある道が、360度に広がる高原の中を通っている。
まさにビーナスラインの名称にふさわしい景色。
「いや、まだ登りがあるなんて聞いてない!!」
記念撮影もする暇なく、最後の力を出して進むと、
ようやく下りに入り、景色はいっぺんして森の中を走る。途中で、通行止めになっていた箇所に合流。武石峠というらしい。
反対側はこうなっていたのね。強行突破しなくて良かった。
地図も見る限りすぐだと思っていたが、なかなか下までつかない。
ようやく美鈴湖という湖の近くまできた瞬間、
「シュー」という音がした。
これは・・
慌てて自転車を止めて確認すると、案の定パンクだ。
Bromptonで初めてのパンク。確かにパンク修理の準備や練習はしていたが、まさかこのタイミングとは・・
とりあえず、自転車押して歩く。美鈴湖までもう少しなので、落ち着いて作業できるところを探す。
修理のメモを片手にパンク修理の準備をする。
Bromptonのパンク修理は、やはりロードより大変だった。
まず恐る恐る内蔵ギアから飛び出ている変なヤツを外す。
クイックリリースレバーなんて便利なものは無いので、後輪を外すためにナットをレンチで回していく。
ここからようやくチューブ交換だが、この作業は、まあロードと同じ。
ただ、後輪を戻す時には一度タイヤの空気を抜かないといけない。タイヤつけてからやり直しになるとメンドイので、慎重になる。
最後に内装ギアをつけ直し調整する。まあ、これは長さを調整すれば良いだけなので、それほど難しい事ではない。
パンク修理が終わり、なんとか暗くなる前に山からおりる事はできた。案の定、松本にあるレオパレスセンターに間に合わない。代わりに部屋を借りる予定のアパートに行く。ポストのシールを外す為だ。
結局今日のミッションは成功する事ができず、ショックを受ける。
しかも、新たに宿を探すか、朝までやり過ごすか、考えないと行けない。
だが、そんな事は忘れてしまうくらい、松本でむっちゃ遊んでやった。
長くなる為、この話はまた今度。
次回は、大阪に行く為、岐阜目指します。